エドウィン・ライシャワー
この人の名前を覚えている人は、どのくらいいるだろうか。元駐日アメリカ大使だった人である。1990年に、79歳でなくなったのである。たぶん、もっとも日本および日本人を理解した米国人の一人である。日本で生まれて、日本で教育(アメリカンスクール)を受け、日本女性ハルと結婚(再婚)した大の日本通であるある。
米国での東洋史研究者であり、ハーバート大学の教授を勤めたのである。ジョン・F・ケネディの要請で駐日アメリカ特命全権大使として1961年に東京に赴任し、「日本生まれのアメリカ大使」として日本人の妻とともに当時の日本国民の間では、とても人気を博したのである。1964年に、アメリカ大使館前で、精神異常の暴漢にナイフで、大腿を刺され(ライシャワー事件)3ヶ月入院したのである。その時の輸血で、肝炎を罹患したが、その後も駐日大使として、活躍した。
手術の翌日、「わたしは日本で生まれたが、日本人の血はない。日本人の血液を多量に輸血してもらい、これで私は本当の日本人と血を分けた兄弟になれた」と言って周囲を笑わせた。「この小さな事件が日米間の友好関係を傷つけないように」と何度も繰り返した。この日本国民を慰める言葉に、当時の日本国民はライシャワー大使にいっそうの親しみを覚えたものであった。
しかし、ライシャワーは、1964年に米国そのものの政策に疑問を感じ、当時のジョンソン大統領に辞任の意を伝えたのである。その後は、ハーバート大学教授に帰任したのである。 アメリカが、沖縄を返還したことや、日本の総理大臣であった佐藤栄作が、ノーベル平和賞を受賞したことなどに、ライシャワーが影響を与えたのであった。しかし、彼は、持病の肝炎が悪化し、延命治療を拒否して生涯を閉じたのである。
彼は、日本および日本人について幾つかの著書を出している。その中の集大成が、1979年に文藝春秋から出版された「The Japanese(ザ・ジャパニーズ)」(國弘正雄訳)である。出版されたときは、書評と、ダイジェスト版を読んだのである。(と、言うより当時の価格1600円は高い!)
『日本のことが、詳しく書かれているな。』というのが、印象であった。今回、改めて、読み直してみると、いろいろなことがわかった。もちろん、日本及び日本人について、著者ライシャワーの見識の深さに驚かされるばかりである。更に面白いのは、この本が、38年前に発刊されているのだが、その内容が、今でもほとんど問題なく納得できることなのだ。ライシャワーが、分析した日本及び日本人の根底に流れているDNAは何ら変化してないということである。逆の言い方をすると、日本人は、ほとんどこの間、進歩がないということだ。
この著書を社会の教科書として推薦したいくらいである。これ一冊で日本の歴史、公民、地理すべてがわかるのだ。
文科省の頭の固いオッチャンたちには、提案したところで無理だろうな。
参考
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